私の好きな男(望月峯太郎ー1人の中のギャグとシリアスー)

 先の日記で“マンガ”についてお話ししたが、私には『二次元での好きな男ベスト3』というものが燦然と輝いて存在する。もう十年以上、それは変わっていない。
 そのベスト3を、今回こちらで発表させていただこう。

うる星やつら』の諸星あたる

『タッチ』の上杉達也(タッちゃん)

そして不動の一位が、
バタアシ金魚』の花井薫である。

 ソノコ君のことが大好きで、その彼女からはつれない態度を返されるが、思い込みの激しい彼はもうすっかり亭主関白。大好きな女相手にビシバシ手を上げる。
 あんたが勝手につきまとってんじゃない、と突っぱねるソノコに
「つきまとォのが俺の立場なんじゃない」
 彼は当然のように答える。
 ソノコいわく「人に笑われること平気で言うしフツウの神経じゃない」。まさに私の萌えツボなのであった。
 そのうち彼は水泳にもアホほど素直に、まっすぐがむしゃらになっていくのであるが、いわゆる純粋なスポ根ものではない。結構ふざけている。が、その中で唐突に、胸を熱くさせるものが現れたりするのだった。

 作者・望月峯太郎(現・望月ミネタロウ)はのちに『ドラゴンヘッド』『東京怪童』などシリアス路線に移行する。
 『バタアシ~』を私はギャグマンガとして捉えているが、セリフや、そこに詰められた中身には、単純に人を笑わせるだけではない、何か、時折読む者をハッとさせるようなものが確かにあった。作者が果たしてこれを一体どういうつもりで描いているのか、読んでいて、“なんか変”なのである。
 一方これに対し、『浦安鉄筋家族』と並んで当時の小・中学生をアホの虜にしたギャグマンガ、『稲中』の作者・古谷実がのちに『グリーンヒル』『ヒミズ』など、暗くドロドロと陰鬱な作品を描いたのには、少なからず衝撃を受けた。その潜在的なものを、私は見抜けなかったからだ。
 また『ぼのぼの』の作者・いがらしみきおは、『I(アイ)』というとんでもなくブッ飛んだマンガを描いたが、一見ほんわかギャグマンガのように見える『ぼのぼの』が、あれはそもそも壮大な哲学だった。

 話は逸れるが、『バタアシ~』の中で、花井薫が「俺はビートルズの「レット・イット・ビー」っての大嫌いなんだ!」と叫ぶシーンがある。
 また、よしもとよしとも青い車』収録マンガ(タイトル失念)では、陸から遠く離れた沖で一人漂う男に「なすがままに、なすがままに」とカモメが諭すのだが、男は「うるせえよ」と即座に吐き捨てる。
 天下のビートルズにケンカを売る二人の男に、私はなんだかスカッとした覚えがある。

 

 さてはじめに述べたこのベスト3。
 彼らに共通する魅力、当事者である私の目には明らかなこの好みが、わかる方にはわかっていただけるのではないかと思っているのであるが、果たしてどうだろう。

 

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